[コラム] 東南アジア主要5カ国のEV政策・補助金・充電インフラを徹底比較 — 日系企業の投資先はどこが有望か

✅ ざっくり言うと

  • 🇹🇭 タイは「30@30」政策の下、EV 3.5パッケージ(2024–2027)で最大10万バーツの購入補助金と、輸入車1台につき国内2台生産(2026年)〜3台生産(2027年)の義務を課しており、東南アジアで最も体系化された製造誘致策となっていると考えられます。
  • 🇮🇩 インドネシアは大統領令55/2019 + 79/2023 + 財務大臣規則38/2023で乗用BEVのVATを11%から1%に引き下げ、ニッケル資源を武器に上流〜下流のEVバリューチェーン構築を進めています。
  • 🇲🇾 マレーシアは2026年1月にCBU(完成車輸入)EV免税が終了し、CKD(現地組立)優遇(2027年末まで)へ大きく舵を切りました。
  • 🇻🇳 🇸🇬 ベトナムは登録手数料免除を2030年末まで再延長(Decree 202/2026)、シンガポールはEEAI最終年を迎えており、両国の制度が明暗を分けています。
目次

はじめに

今回は東南アジア主要5カ国、マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムの電気自動車(Electric Vehicle。以下「EV」)の規制状況、EV企業への補助金、消費者への補助金、EV充電ステーションの導入状況について説明していきます。

EVをめぐる制度は特に速度が速く、2025年後半から2026年前半にかけて各国の枠組みが大きく再編されました。
日系企業の方から「ASEANのEV分野へ進出するなら、どの国のどの分野がよいか」というご相談をいただくことも増えており、本記事の最後には私なりの投資先候補についても触れたいと考えています。

情報の正確性を担保するため、各国政府機関や信頼できる一次資料に依拠して整理していますが、制度は日進月歩で変わりますので、実際の投資判断の際は最新の公式資料をご確認いただければと思います。

マレーシア — CBU優遇終了、CKD一択の時代へ

規制の枠組み

マレーシアのEV政策の中核は、National Energy Transition Roadmap(国家エネルギー移行ロードマップ。以下「NETR」)National Automotive Policy 2020(国家自動車政策。以下「NAP 2020」)Low Carbon Mobility Blueprint 2021–2030(低炭素モビリティ青写真。以下「LCMB」)の3本柱で構成されていると考えられます。

NETRでは、輸送部門の脱炭素化に向けて、2050年までにEV普及率80%、EVの現地製造比率90%という目標が掲げられています(出典:MIDA)。
所管は投資貿易産業省(Ministry of Investment, Trade and Industry。以下「MITI」)で、その下にNational EV Task Force(NEVTF)National EV Steering Committee(NEVSC)が設置されているようです。

企業向けインセンティブ

EEV(Energy Efficient Vehicle、エネルギー高効率車両)を組立・製造する企業について、法定所得(statutory income)に対して70%または100%の法人所得税免除を5年または10年受けられる制度が用意されていると考えられます(出典:The Investor)。

EV充電機器の設置、保守、修理、EVインフラおよび充電ステーションの整備等の緑技術サービスに投資する企業には、事業開始から3年間、70%の税免除が適用されます。
加えて、Green Investment Tax Allowance(GITA)により、5年間にわたる100%投資税額控除も提供されています(出典:MIDA)。

消費者向けインセンティブと2026年の大転換

2026年に大きな転換点を迎えました。
CBU(Completely Built-Up、完全組立輸入車)EVについて、輸入関税および物品税の免除が2025年12月31日をもって終了しています(出典:paultan.org)。

財務省は、2026年の歳入見込みをRM 12.79 billionと発表し、EVインセンティブ終了を増収要因の一つとして明記しています。

2026年1月からのCBU EVに対する新たな税構造は、原産国がマレーシアとFTA(自由貿易協定)を有するか否かで異なり、輸入関税10〜30%+物品税10%+売上サービス税10%、あるいは輸入関税5%+物品税10%+売上サービス税10%のいずれかの適用となっていると考えられます。

業界関係者による価格上昇見通しは以下のとおりです。

  • Bermaz Auto(Xpengディストリビューター)Group CEOのFrancis Lee氏。「価格は少なくとも20〜30%上昇する」
  • GWM Malaysia COOのRoslan Abdullah氏(Berita Harian紙報道)。「最大100%の値上がりも起こりうる」

一方で、CKD(Completely Knocked-Down、現地組立車)EVについては、税制優遇が2027年末まで継続されます。
ProtonがTanjong MalimでEV専用工場を稼働開始し、Perodua、Volvo、Mercedes-Benzがすでに現地でEVを組み立てていると考えられます。

消費者側にはこの他、以下のインセンティブがあります。

  • 個人が自宅等にEV充電機器を設置、レンタル、購入する場合、または充電サービスの契約料について、年間MYR 2,500の所得税控除(2027年まで)(出典:The Investor)。
  • 電動バイクの購入について、年収MYR 120,000以下の個人に対して最大MYR 2,400の税還付(2024課税年度分)(出典:The Investor)。

充電インフラ整備状況

政府はLCMBに基づき2025年末までに公共EV充電器10,000基の設置を目標としていましたが、Suruhanjaya Tenaga(エネルギー委員会。以下「ST」)が2025年11月末時点で発表したライセンス数は5,360基(AC 3,569基+DC 1,791基)にとどまりました。

Malaysia Zero Emission Vehicle Association(MyZEVA)は、AC充電器8,500基の達成は2026年第3四半期にずれ込むと見込んでいます(出典:paultan.org)。
主要な充電事業者(Charge Point Operator。以下「CPO」)は、ChargEV、Gentari、JomCharge、Shell Rechargeなどが挙げられます(出典:MIDA)。

STは充電システムライセンス(EVCS)の審査期間を従来の60日から30日、実質2週間程度へ短縮するなど、行政手続きの効率化も進めています(出典:paultan.org)。

市場データ

2025年1〜8月のマレーシアのEV登録数は23,396台(前年同期比63.4%増)(出典:SoyaCincau)、2025年車種別ランキングでは、Proton e.MAS 7が8,677台で首位、BYD Sealion 7(4,454台)、Tesla Model Y(4,401台)、BYD Atto 3が続いています(出典:Automacha)。
2026年1〜5月の登録数は25,523台(前年同期比83.99%増)と、CBU増税前の駆け込み需要も相まって成長が続いているようです(出典:SoyaCincau)。

インドネシア — Perpres体制とニッケル戦略の融合

規制の枠組み

インドネシアのEV加速政策は、大統領令55/2019(Perpres 55/2019)「電池ベース電動車両の道路輸送プログラム加速に関する大統領令」を土台とし、その改正である大統領令79/2023(Perpres 79/2023)、および財務大臣規則38/2023(PMK 38/2023)が実務上の中核と考えられます(出典:ICCT)。

政府は2030年までに年間250万台のBEV(Battery Electric Vehicle、電池電気自動車)生産という野心的な目標を掲げているとされています(出典:ICCT)(目標値は文献により幅があるため、公開時に最新の政府公式値での確認を推奨します)。

現地調達要件(TKDN)

投資判断において避けて通れないのがTKDN(Tingkat Komponen Dalam Negeri、国内部品比率)要件です。
EV分野では2019〜2021年は35%以上、2022年以降は最低40%が要求されており、この水準に達しない場合はインセンティブの利用が制限される仕組みとなっているようです(出典:Emerhub)。
TKDN水準は段階的に引き上げられる計画です。

企業向けインセンティブ

  • 現地生産にコミットする外国メーカーへの輸入関税減免。
  • 法人所得税減免(最大15年)。
  • 機械輸入VAT免除。

BYD、Wuling、Hyundai、VinFast等の主要メーカーがすでに現地生産投資を発表しており、インドネシアは2025年に中国からのEV輸出増加額で世界第2位となっています(出典:Ember)。

消費者向けインセンティブ

  • 乗用BEVのVATを標準11%から1%に軽減(PMK 38/2023、TKDN一定水準以上の車両対象)(出典:ICCT)。
  • BEVに対する贅沢税(PPnBM)免除(出典:ICCT)。
  • 電動バイク購入補助金Rp 7,000,000/台(2023年開始)。ただし、2025年初に停止し、2026年7月に再開予定と報じられています(出典:Jakarta Globe)。

充電インフラ整備状況

国営電力会社PLN主導のSPKLU(Stasiun Pengisian Kendaraan Listrik Umum、公共EV充電ステーション)が拡大中です。
2025〜2026年の年末年始輸送期には主要高速道路のサービスエリアに1,515基が待機配備されました(これは繁忙期の高速道路SA配備数であり、全国総設置数とは異なります)(出典:Gaikindo)。
2026年2月にはPLN主導のコンソーシアムがバンテン州タンゲラン県で急速充電ステーション「Zora Signature」を開設しています(出典:electrive.com)。
SPKLU展開はDC急速充電(50〜150kW)中心の設計とされているようです。

市場データ

インドネシアの2025年第2四半期のEV市場浸透率(BEV+PHEV)は15.2%に達し、Q1 2025の10.1%から急伸しました(出典:ICCT市場スポットライト)。四半期販売台数は約22,000台、EVストック累計は10万台超となっています(出典:ICCT市場スポットライト)。

電動バイク市場のシェアは2024年Q2に1.4%でピーク、その後Q4に0.6%まで下落しています。
補助金停止の影響が見て取れる推移と考えられます(出典:ICCT市場スポットライト)。

シンガポール — 2030年ラストスパートとEEAI最終年

規制の枠組み

シンガポールではLand Transport Authority(陸上交通庁。以下「LTA」)が主管し、以下の明確なタイムラインが示されています(出典:LTA)。

  • 2025年から新規ディーゼル乗用車登録を停止
  • 2030年から新車登録はすべてクリーンエネルギー車(電気、ハイブリッド、水素燃料電池)に限定

EV Charging Act(EV充電法。2023年12月施行)に基づき、以下が義務化されているようです(出典:Ministry of Transport)。

  • 供給される全ての充電器はLTAの安全基準に適合し、認証・登録が必要。
  • 充電サービス提供事業者はLTAのライセンスを取得し、稼働率維持、賠償責任保険加入、データ共有等の要件遵守が必要。
  • 新築および大規模改修建物には最低数の充電器と電気容量の確保が義務。
  • コンドミニアムでの充電器設置の議決要件を50%に引き下げ。

技術基準はSingapore Standard 722(SS 722)が2026年4月1日から従来のTR25に代わって適用されています(出典:Ministry of Transport)。

消費者向けインセンティブ(EEAI最終年)

  • EV Early Adoption Incentive(EEAI)。新規登録の完全EVおよびタクシーに対してAdditional Registration Fee(追加登録料。以下「ARF」)から45%リベート。2026年1月1日から2026年12月31日までのリベート上限はSGD 7,500EEAIは2027年1月1日から廃止されます(出典:LTA)。
  • Enhanced Vehicular Emissions Scheme(VES)。乗用車のBand Aリベートは、2026年はSGD 22,500、2027年はSGD 20,000へ段階的に減額されます(出典:LTA)。
  • 電気乗用車およびタクシーのARFフロアをSGD 0に引き下げ(出典:Ministry of Transport)。
  • 商用車向けCommercial Vehicle Emissions Scheme(CVES)、大型車両向けHeavy Vehicle Zero Emissions Scheme(HVZES)およびElectric Heavy Vehicle Charger Grant(EHVCG)が用意されているようです(出典:Ministry of Transport)。

充電インフラ整備状況

政府は2030年までに60,000基(公共駐車場40,000基、私有敷地20,000基)を目標としています。
2026年3月時点で30,500基が導入され、半分を超過しました(出典:Business Today)。

Housing and Development Board(住宅開発庁。以下「HDB」)の全団地がすでに「EV Ready」となっており、90%以上のHDB駐車場に充電ポイントが設置されました。2027年末までに全HDBタウンに少なくとも1箇所の急速充電ハブを設置する計画です(出典:Ministry of Transport)。

非戸建て私有住宅向けにはEV Common Charger Grantが2021年7月に開始され、2026年12月31日まで、または3,500基への助成が達成されるまで共同利用充電器の設置費用を助成しています(出典:Ministry of Transport)。

2026年第1四半期の新車登録に占めるEVシェアは57.6%(2025年通年で45%)と、すでにEVが主流となっている状況です(出典:Business Today)。

タイ — 「30@30」政策とEV 3.5パッケージ

規制の枠組みと「30@30」目標

タイはBoard of Investment(投資委員会。以下「BOI」)およびNational Electric Vehicle Policy Board(EV政策委員会。以下「EV Board」)が中核となり、「30@30」政策を掲げています。
これは2030年までにZEV(Zero Emission Vehicle、ゼロエミッション車両)を国内総生産の30%以上(乗用車725,000台、二輪車675,000台)とする目標です(出典:BOI)。

EV 3.5パッケージ(2024–2027)

BOI承認のEV 3.5は、EV 3.0(2022–2023)の後継として2024年から2027年までの4年間の包括的パッケージです(出典:BOI)。

乗用BEVの消費者向け購入補助金は、EYの解説によれば以下のとおりです(出典:EY)。

  • 対象は価格200万バーツ以下・電池容量10kWh以上の乗用BEV。
  • 電池容量10〜50kWh未満。2024年THB 50,000、2025年THB 35,000、2026〜2027年THB 25,000
  • 電池容量50kWh以上。2024年THB 100,000、2025年THB 75,000、2026〜2027年THB 50,000
  • 補助金対象者。BEV輸入業者は2024〜2025年、国内組立業者は2024〜2027年。

電動ピックアップおよび電動バイク(国内組立車のみ)に関する補助金は以下のとおりです(出典:EY)。

  • 電動ピックアップ(200万バーツ以下、電池50kWh以上、車両重量4,000kg以下)。1台当たりTHB 100,000(2024〜2027年)。
  • 電動バイク(150,000バーツ以下、電池3kWh以上)。1台当たりTHB 10,000(2024〜2027年)。

税制優遇は以下のとおりです(出典:BOIEY)。

  • 価格700万バーツ以下の乗用EVについて物品税を8%から2%に軽減
  • 価格200万バーツ以下の乗用EVをCBUで輸入する場合、2024〜2025年に限り輸入関税を最大40%減免
  • 電動ピックアップの物品税は2024〜2025年に0%、2026年以降は2%。
  • 電動バイクの物品税は5%から1%に軽減。

現地生産義務(Production Offset)が本パッケージの最も重要な特徴です(出典:BOI)。

  • 2026年12月までに、輸入CBU 1台につき国内で2台生産(1:2 ratio)。
  • 2027年12月までに、輸入CBU 1台につき国内で3台生産(1:3 ratio)。
  • 電池部品の現地化は2026年から開始する必要があります(出典:EY)。

2025年半ばからは、国内生産EVの輸出台数も義務履行にカウント可能な緩和措置が導入されました(出典:ASEAN Briefing)。
BOI認定案件の法人所得税免除は最長8年、活動コード次第で追加延長も可能です(出典:ASEAN Briefing)。

充電インフラ整備状況

主要CPOはEV Station PluZ(PTT系)Elex by EGAT(タイ発電公社系)PEA VOLTA(地方電力公社系)EA AnywhereSHARGEなどで、政府系電力・石油会社が主導する構造となっているようです。
整備状況は、2025年3月時点で3,700超のステーションと11,600超のコネクタ(うちDC急速充電が6,000超)とされ(出典:ASEAN Briefing)、別の市場集計でも約3,720ステーション・11,622基と同水準が示されています(出典:TDL Service)。

市場データ

2025年8月の新規BEV登録は11,486台(出典:Thai Enquirer)、2026年1月の販売台数は前年同月比3倍以上の44,000台超を記録しました(出典:Benchmark Minerals)。
EV 3政策への参画企業は15社に達しており、既存の日系メーカーに加え中国系メーカーの参入も加速していると考えられます(出典:BOI)。

ベトナム — VinFast一強と登録手数料免除の2030年延長

規制の枠組み

ベトナムのEV政策の上位フレームは、2022年に首相承認されたDecision 876/QD-TTg「輸送部門のグリーンエネルギー移行および炭素・メタン排出削減行動計画」です(出典:Vietnam Briefing)。

その下位法令の変遷は以下のとおりです。

  • Decree 10/2022/ND-CP。BEVについて最初の3年間は登録手数料100%免除、次の2年間は50%減額を規定(出典:Trade.gov)。
  • Decree 51/2025/ND-CP(2025年3月1日公布)。BEVの登録手数料100%免除を2027年2月28日まで延長(出典:Vietnam Briefing)。
  • Decree 202/2026/ND-CP2026年6月8日公布、2027年3月1日施行)。BEVの登録手数料100%免除を2030年12月31日まで再延長(出典:Vietnam NewsVietnam Law Magazine)。

この2030年までの延長は、外国自動車メーカーに対して長期的な政策の予測可能性を担保するものであり、FDI誘致において重要な意味を持つと考えられます(出典:Vietnam Law Magazine)。

消費者向けインセンティブ

  • 登録手数料100%免除(2030年12月31日まで、Decree 202/2026)(出典:Vietnam News)。
  • 9人乗り以下のBEVの特別消費税を3%に軽減(2027年2月28日まで。以降は11%に上昇予定)。同カテゴリーの内燃機関車は排気量に応じて35〜150%が課税されるため、優遇幅は極めて大きいと考えられます(出典:Tilleke & Gibbins)。

なお、財務省は特別消費税優遇についても2030年まで延長する提案を公表しており、今後の動向が注目されます(出典:Vietnam News)。

企業向けインセンティブ

EV製造への投資家に対しては以下が用意されています(出典:Tilleke & Gibbins)。

  • 法人所得税優遇(低税率、租税休日、税額減免)。
  • 固定資産創出用または製造用の輸入品への輸入税免除。
  • 土地使用料、土地賃料、土地使用税の免除・減額。
  • 加速償却。
  • 公共充電ステーションへの優遇電力料金。

Official Letter No. 8685/VPCP-CN(2024)は充電インフラ拡大と国家技術基準策定を政府方針として明確化しています(出典:Tilleke & Gibbins)。

充電インフラ — V-Greenの独走

Vingroup創業者Pham Nhat Vuong氏がVinFastから独立させたV-Green Global Charging Station Development JSCが主導しています。

  • 2025年末までに乗用車およびバイク向け150,000基の充電ポート整備計画を完了(出典:VIR)。
  • 2026年3月、追加で4億米ドル(VND 10 trillion)を投資し、34省で99の超急速充電ハブを2026年内に整備する計画を発表(出典:VIR)。各ハブには最大100基の150kW急速充電器を配備し、15分でフル充電相当の航続距離を確保する仕様のようです。
  • ハブは100%再生可能エネルギー(風力・太陽光)を、VinFast製のBattery Energy Storage Systems(BESS)に蓄電して供給する構想です(出典:VIR)。
  • 2028年までに全国50万基の充電ポートを整備する目標を掲げています(出典:VIR)。

その他、シンガポール系のCharge+がPorscheと提携してハノイ〜ホーチミン間の1,700km充電ネットワークを整備、さらにGrab Vietnamとも協業を進めています(出典:VIR)。

市場データ

VinFastは2025年にベトナム国内で175,099台のEVを納車し、12月単月で27,649台という自動車メーカー史上ベトナム最高の月間販売記録を更新しました(出典:VinFast)。
VinFastはベトナムで15か月連続の販売台数1位を維持し、モデル別にはVF 3が44,585台、VF 5が43,913台、VF 6が23,291台となっています(出典:VinFast)。
2025年通年の市場シェアは約36%と推計され、単一ブランドとしてベトナム自動車市場で首位を占めています(出典:technode)。

VinFastは400のサービスワークショップと150,000超の充電ポートを34省市で展開しており、アフターサービスと充電インフラの両輪をVingroupグループが握る構造となっているようです(出典:VinFast)。

5カ国比較サマリー

項目🇲🇾 マレーシア🇮🇩 インドネシア🇸🇬 シンガポール🇹🇭 タイ🇻🇳 ベトナム
中核政策NETR、NAP 2020、LCMBPerpres 55/2019・79/2023、PMK 38/2023LTA施策、EV Charging Act30@30、EV 3.5(2024-2027)Decision 876、Decree 202/2026
国家目標2050年EV 80%2030年BEV年産250万台2030年新車全てクリーン2030年ZEV生産30%2050年ネットゼロ
企業税制法人税70-100%免除(5-10年)、GITA法人税減免最大15年プロジェクト個別法人税免除最大8年+延長法人税優遇、土地関連減免
消費者最大補助CKD免税、充電設備RM 2,500控除VAT 11%→1%、PPnBM免除ARFリベート最大SGD 7,500(2026限り)乗用車最大THB 100,000/台登録料100%免除(2030年まで)、特別消費税3%
CBU輸入税2026年1月から復活TKDN連動通常課税2024-2025は40%減ICE並み課税
公共充電器数5,360基(2025年11月)高速SA配備1,515基(繁忙期・総数ではない)30,500基(2026年3月)約3,720ステーション・11,622基V-Greenで150,000超ポート
2030充電目標10,000基(達成遅延)大規模拡張中60,000基継続拡大2028年50万ポート
EV普及率2025年1-8月で23,396台登録2025年Q2で15.2%2026年Q1新車で57.6%2026年1月月間44,000台超VinFast市場シェア約36%(2025)

日系企業のEV投資先 — 私からの提案

ここまで各国の制度を整理してきましたが、それでは日系企業がEV関連投資を検討する場合、どの国のどの分野が有望と考えられるか。
以下、私見として整理させていただきます。

車両製造:タイ(乗用車・電動ピックアップ)

タイは以下の複合要因から、完成車製造の投資先としては依然として最有力と考えられます。

  • BOI EV 3.5による法人所得税最長8年免除および機械輸入関税免除。
  • 「30@30」政策の明確な国家目標と長期政策安定性。
  • 既存の自動車部品サプライヤー基盤(ASEAN最大の自動車製造ハブ)。
  • 輸出台数も現地生産義務にカウント可能な仕組みは、ASEAN域内および豪州・欧州輸出拠点として極めて有利。
  • 電動ピックアップに補助金が用意されている点は、日系メーカーの得意領域と親和性が高いと思われます。

一方、すでに中国系(BYD、Great Wall、SAIC)や台湾系メーカーが積極投資を進めており、遅れて参入する場合は差別化戦略の設計が重要になると考えられます。

電池・素材:インドネシア(上流〜中流)

インドネシアは世界最大のニッケル埋蔵国として、電池サプライチェーンの上流を握る戦略的地位にあります。
TKDN要件は障壁である一方で、以下の理由から投資対象として魅力的と考えられます。

  • ニッケル、コバルト等の原材料調達コスト優位。
  • 現地パートナーとのJV設立で、TKDN要件クリアと補助金取得の両立が可能。
  • 政府主導のバリューチェーン統合(採掘→製錬→前駆体→カソード→セル→パック)の中で、日系企業は特に電池セル・パック製造、電池管理システム(BMS)、リサイクルの分野で技術優位を発揮できると思われます。
  • ホンダ、三菱自動車等がすでにインドネシアで足場を持っている点も、投資判断上プラスに働く可能性があります。

リスクとしては、TKDN比率の急な引き上げ、政策の予測可能性、法制度執行の一貫性への懸念が挙げられます。

充電インフラ:マレーシア(急速充電、住宅・商業施設)

マレーシアは公共EV充電器の目標達成が遅れており、「量から質」への戦略転換が起きていると報じられています(出典:Reccessary)。
裏を返せば、市場ニーズと供給のギャップが最も大きい国とも言えると考えられます。

  • CKD EV優遇継続(2027年末まで)により、国内EV販売台数は今後も伸長が見込まれます。
  • 緑技術サービスに対する3年間70%の税免除、GITAが利用可能。
  • 高速道路コリドー沿いのDC急速充電、ショッピングモール等の商業施設向けAC充電の両分野で、日系企業(東京電力系のe-Mobility Power、日立系等)の技術・オペレーション実績を活かせる余地が大きいと考えられます。
  • ChargEV、Gentari等の地場CPOとのアライアンス、あるいはM&Aによる参入も検討する価値があると考えられます。

商用・大型車両EV:シンガポール

シンガポールは市場規模こそ限定的ですが、以下の観点から日系企業にとって「実証実験・地域ハブ」として価値があると考えられます。

  • HVZES(Heavy Vehicle Zero Emissions Scheme)およびEHVCG(Electric Heavy Vehicle Charger Grant)により、大型車両の電動化に特化した補助金枠が存在。
  • 2027年末までに全HDBタウンで急速充電ハブを整備する明確な計画。
  • 高い規制水準(SS 722等)と英語ビジネス環境が、ASEAN他国への技術輸出の踏み台となる可能性。
  • EEAI終了後(2027年〜)は個人向けEV市場の停滞リスクがあるため、個人乗用車ではなく商用・大型車両およびB2B充電インフラに絞った戦略が現実的と思われます。

電動二輪・電動配送:ベトナム(ただし競合リスクに留意)

ベトナムはVinFastの寡占が進行中であり、乗用四輪EVでの直接競合は極めて厳しいと考えられます。
一方で、以下の領域には可能性があります。

  • 電動二輪車。ヤマハ、ホンダの既存プレゼンスを活用した現地製造。
  • 電動配送車両(Last Mile Delivery)。Grab Vietnam提携等のB2Bチャネルが有力。
  • バッテリー交換(Battery Swap)ステーション。V-Greenも展開予定ですが、都市部・地方部で複数プレイヤーが共存する余地はあると考えられます。
  • 部品サプライヤーとしてVinFastへの供給。

Decree 202/2026による2030年までの登録手数料免除延長は、長期投資回収の見通しを立てやすくする大きなシグナルであり、この機会を捉えた戦略的な検討が有効と考えています(出典:Vietnam Law Magazine)。

総合ランキング(あくまで私見)

分野別・国別に総合すると、日系企業の投資優先度は以下のようになると考えています。

  1. タイ×完成車製造・部品。中長期的な安定性と輸出拠点性。
  2. インドネシア×電池上流・中流。資源優位と、TKDN対応で参入障壁が逆に強みに転じる可能性。
  3. マレーシア×充電インフラ。ギャップ市場、税制優遇、日本の技術との親和性。
  4. シンガポール×商用・大型EV。実証拠点、法制度の透明性。
  5. ベトナム×電動二輪・部品供給。競合リスクを避けた領域選定が必要。

まとめ

東南アジア5カ国のEV政策は、「一律の補助金による普及促進フェーズ」から「制度の選別と成熟フェーズ」へ移行しつつあると考えられます。

  • タイのEV 3.5と現地生産義務、インドネシアのTKDN、マレーシアのCBU優遇終了は、いずれも「輸入依存から国内バリューチェーン構築への転換」を明確に示すシグナルです。
  • シンガポールのEEAI終了と、ベトナムのDecree 202/2026による2030年までの延長は、「補助金の出口戦略」への各国の対照的なアプローチを示していると思われます。
  • 充電インフラは、目標未達(マレーシア)、寡占進行(ベトナム)、順調な達成(シンガポール)と、国ごとに明暗が分かれています。

日系企業にとっては、「どの国のどの分野で、どのタイミングで参入するか」の設計が、これまで以上に重要になっているという印象です。
各国の一次資料および現地政府との対話を通じて、制度変更のタイミングを見極めた投資判断が不可欠と考えています。

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