[コラム] 2025年11月・マレーシアM&A市場の最新動向

✅ ざっくり言うと

  • 🏦 金融・資産運用の買収・再編が加速
  • 🌏 成長分野(再エネ・半導体・ヘルスケア)のIPO・外資導入活発
  • ⚖️ クロスボーダー契約のリスク顕在化、対応力が事業継続の鍵
  • 🔄 東南アジア域内で地域横断型の資本再編が続く
目次

はじめに

今回は、オンライン新聞のMorning Edgeで2025年11月第3週に報道された主なM&A関連ニュースから、マレーシアおよび東南アジア市場の特徴的な案件をピックアップし、そこから読み取れる実務的な傾向や示唆を解説します。
業界横断的な動きとリスク変化に注目し、今後の前線で押さえておくべきポイントをまとめます。

今週のM&A記事ピックアップ

Wilmar hit with another fraud verdict, found jointly liable for RM1.1 bil compensation in China(11月21日号/2ページ)

Wilmar Internationalは中国で巨額詐欺事件の判決を受け、約11億リンギットの損害賠償の共同責任を問われました。グローバル取引におけるコンプライアンスとリスク管理の重要性が浮き彫りとなっています。

Affin Bank to acquire Pheim Asset Management for RM50 mil(11月21日号/4ページ)

Affin BankはPheim Asset Managementを現金5,000万リンギットで買収する条件付き契約を締結しました。金融機関による非中核事業の買収とグループ再編の流れがうかがえます。

Hanwha Q CELLS acquires Malaysian solar plant(11月20日号/8ページ)

韓国Hanwha Q CELLSがマレーシアの太陽光発電所を買収しました。再生可能エネルギー分野への国際資本流入が続いていることが特徴です。

Big Caring Group mulls RM2 bil IPO, SkyeChip files for Main Market listing, Wasco Greenergy launches IPO at RM1/share(11月21日号/5,9ページ)

医薬品チェーンのBig Caring Groupが最大20億リンギット規模のIPOを検討中。SkyeChip(半導体設計企業)やWasco Greenergy(再エネ企業)もIPOを進めており、成長分野での上場と高バリュエーションが目立ちます。

Sime Darby Plantation acquires Vietnam asset, Unitrade United announces merger(11月19日号/11,7ページ)

Sime Darby Plantationはベトナムで資産を取得し、地域展開を強化。建材業界ではUnitrade Unitedが経営統合を発表するなど、農業や製造業分野でのM&A事例も見られます。

2025年11月第3週・マレーシアM&A市場の傾向

金融・資産運用の多角化と再編の波

今週最も特徴的なのは、Affin Bankによる資産運用会社の買収など、金融セクターで本業以外への戦略的シフトが加速している点です。
低金利環境や規制変化に直面するなか、安定収益源の確保と資産分散、グループ内部の経営効率化が合併・買収の背景にあると考えられます。日本や他のASEAN諸国でもみられる潮流です。

成長分野での積極的な資金調達・IPO活発化

Big Caring Group、SkyeChip、Wasco Greenergyといった成長分野の事業会社が相次いで大型IPOや上場申請を行っています。
PEファンドや海外資本の参画も目立ちます。半導体や再エネへの資金流入は、グローバルなサプライチェーン多様化やESG投資という世界的テーマとも連動し、今後も分野拡大が予想されます。

クロスボーダー案件のリスク管理・訴訟

Wilmar Internationalが中国で巨額の契約詐欺訴訟に直面したケースは、クロスボーダー取引の契約、現地ガバナンス、コンプライアンス管理の重要性を改めて浮き彫りにしています。
単なる契約締結だけでなく、現地子会社やパートナーの実態把握・運用まで含めた体制強化が不可欠です。訴訟リスクのグローバル波及にも備えが求められています。

グループ再編・地域横断型の資本移動

Sime Darby Plantationのベトナム資産取得やUnitrade Unitedによる経営統合のように、農業・建材など伝統分野でもグループ再編・M&Aが加速しています。
事業シナジー追求や市場拡張、より柔軟な経営判断の土台として組織再設計が進んでいる状況です。

まとめ

2025年11月第3週の主要M&A案件を通じて、マレーシアおよび東南アジア市場は「伝統金融の多角化」「成長分野での新規資金導入」「クロスボーダー・リスク対応」「地域・産業横断の再編」の4つの潮流が顕著になっています。
今後は法務・財務・現地オペレーションの三位一体での対応力が問われる時代となりそうです。

今回は週単位でまとめてみました。(可能な限り)引き続き週単位、できれば月単位、四半期範囲で傾向をまとめていきたいと考えています。

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